思い出していた。
次男が声を震わせ泣きながらボクに言った。
「おかあさんのとこにいきたい…。」
身をかがめて子を抱いた。
「あした、おかあさんのとこにいこうね。」
ボクは、笑いながら子を諭した。長男はボクと暮らすと言った。
その夜、次男の荷をまとめながらボクは泣いた。涙が止まらず、嗚咽した。

前夜、次男からFacebookのメーセージが入った。
「友達の女の子が、instagramのお父さんの写真を見て興味を持ったらしく、フォローしたみたい。よろしく!」
とてもお洒落で美しいふたりの若い女性のフォロワーが、ボクのinstagramで増えた。
深夜、ボクは「海街diary」をダウンロードして観た。若い4人姉妹の素敵な物語だった。
男の子ばかりのボクには若い女の子のノビノビとした日常は眩しく、子らの彼女ならいいのになと思った。
次男は、東京の恵比寿に住んでいて弁護士をしている。
長男は、メガバンクに勤めていて秋に長崎に転勤した。
あの頃30代だったボクも今年で63歳、ずいぶん歳をとった。